談林サロン

DANRIN SALON

<小説・密厳國紀>霧生丸編⑪ 「内輪山」

2020/07/23

僧侶衆一行はまた三々五々寛いだ雰囲気で外輪山の中に降りて行く。
途中幾つか祠のようなものもあり中に繋がっているようだ。
中から何かの香りが漂ってくる。
広大な面積の平地は山の外より暖かくてせせらぎを渡ってくる風はとても爽やかで心地よい。
せせらぎに沿って歩いて行くと少しずつ平地を登ってゆく。
田畑もあり牧場もあり牧場の奥には厩舎が見える。
田畑には田畑の民の家が牧場には牛飼いの民の家が見える。
さらに進むと硫黄の匂いがしてきた。
木陰に岩場があり半分露天の湯殿が見える。
奥の半分は大屋根がかかり雨天でも入れるようになっているようだ。
もう日は高く上がっていた。
せせらぎの源流は渓谷になり外輪山の中に繋がっている。
狭い渓流に沿って進むと岩盤の中に入る。
岩盤の中には巧みに木造で館が造られ、
土間で皆荷を解いて出迎えの僧に預けて足をすすぎ板の間に上がる。
それぞれ部屋に分かれていく。
青顧の前に若い僧が現れ
「青顧。私が案内しましょう」
鑁大阿は
「これは青應、青顧の身近な世話も指導もする、遠慮なくなんでも聞くが良い。」
と言った。

部屋に入ると大きな安堵感の中で深い眠りに入った。
目覚めると漆黒の道場に案内された。
霧生丸の姿を見て記憶が蘇った。